ウェス・アンダーソン監督作品「犬ヶ島」感想

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こんにちわ、morn(モーン)です。
このブログでは、見ておもしろかった映画の感想も記事にしていこうと思います。
必ずしも最近話題だったりするタイトルを記事にするわけではないですが、
「あー、自分もそれ見たことあるよ」って人に暇つぶしに読んでもらえたら嬉しいです。

*この記事は堂々とネタバレします。あまりそれが鑑賞には影響がない映画だと思いますが、未鑑賞の方は読む際にご了承ください。

それでは、今回感想を書くのはウェス・アンダーソン監督作品の「犬ヶ島」です。
これはつい最近見たんですが、きっかけはビートルズのドキュメンタリー映画「ゲットバック」を見るために入会した「ディズニー+」に公開されていたからです。(「ゲットバック」についてはまた記事にします。ひたすらかっこよかった・・^ ^ )

ぶっちゃけて言えばビートルズ以外興味なかったのですが、せっかくなんで月額分は元取ろうと思いまして、いろいろザッピングしているなかでこの映画が引っかかった感じです。

ウェス・アンダーソンの映画はこれで初めてちゃんと見ました。存在は知っていました。「なんかキツネのアニメ撮ってたよな」くらいに。なんで、僕はアニメーションが主な活動の場の人なのかなと思ったら、実写映画がメインなんですね。検索して調べていくと、監督した映画の宣伝ポスターやシーンの切り取り画像なんかがやたら色彩設計されてたりデザインが凝ってたりしたので、このあたりで「自分が撮りたいものを撮る」オシャレ系のマニアックな監督なのは分かって、見る前にある程度の心構えができました。

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前述の経緯もあり、ディズニーとかピクサーとか(今や一緒か。。)の王道の安心して見れる作品は期待せず、「変な映画だなあ、でも好き!」を期待して鑑賞を始めました。先に結論を書くと、期待通りでした。しかも、王道とは言えませんが、「アニメーション映画ならではの普遍的な、心温まるシーン」もあって、いい意味での期待の裏切りもあり、個人的にはすごくウェスアンダーソンが気になるきっかけになりました。

ストップモーションアニメ「だからこそ」

この映画は全編ストップモーションの手法でアニメーションを作っています。この手法をわざわざ使うあたりからこだわり系の監督って感じなのですが、僕自身はストップモーションアニメには懐疑的なところがありました。その原因は、ティムバートンの「コープスブライド」を見たことがきっかけです。
この映画もストップモーションで作ってたんですが、「これCGじゃないの?すごい」じゃなくて
「これCGじゃないの?CGでいいじゃん」って、正直思ったんです。どう見てもCGみたいにずっと見えたんです。多分それはそれですっごい技術だと思うのですが、僕が求めていたのは、手作業ならではのガチャガチャ感といいますか。例えるなら、好きな歌手のライブ行って、すっごい歌うまくて、「録音と変わんないじゃん、やっぱすげー」ってなる人はなると思うんですが、僕は「録音と変わらないんなら録音でいい」って思ってしまう人間なんです。音程が少し外れるとか、ギターが録音よりも荒くてラフだったりする方が「ライブだな」って満足するんです。それが例えとしてあっているかどうかは置いといて、わざわざストップモーションでつくったものなら手作業の洗練されていない映像を僕は求めていて、「犬ヶ島」のストップモーションにはその魅力に溢れていました。具体的には、

喧嘩シーン

びっくりするくらい「喧嘩」です。擬音の文字がでてきそう。「ドカ」「バキ」みたいに。
ここまで振り切ると逆に清々しいというか、多分普通にいい映画撮ろうとするとリアリティを追求しだして、血生臭くつくると思うんですが、そこは一切この部分では捨ててます。見た目はもろ「ストップモーション」で、僕的にはすごく好きなところです。こういう記号表現に振り切ったかと思えば..

板前が寿司をつくるシーン 手術シーン

異常にリアルです。はっきり言ってここまでこだわる必要多分ないです。カニが、蛸の足が、「現実以上に生々しい」です。手術シーンはずっと引きの構図で、お医者さんたちの声が「ボソボソ・・」と、あんまり緊張感のないやりとりをしながら、(肝臓小さいですねーみたいなこと言いあってます)切って縫うまでが異様に細かく描写されます。「メス!」「はい!」「先生、汗が・・」みたいなのはまったくなく、淡々とリアルに終わる。喧嘩シーンとはえらい違いなんですが、これがこのストップモーションアニメをわざわざ使って描く大きな裏付けになっているような気がします。省略するようなことを時間たっぷり使って見せてくれることで、普通じゃ見れない「ストップモーションならでは」の映像体験になっています。そしてそれは多分アニメーションを見る上での普遍的な快感の一つだとおもうんです。

「涙」シーン

もらい泣きしました。言いたいのは、人形に感情を込めるという、やはり「ストップモーション」ならではの表現になっているということです。アタリ少年がカチカチカチ・・と歯を食いしばって涙を浮かべるシーン、スポッツがイヤフォンでアタリの声を聞いて心が通じ合い、涙が出るシーン、、、無機質な人形に心を表現させることで、普通に人が涙する演技のシーンよりもより感情というものを強く発生させることができるんですね。

なんで日本を題材にしたんだろう?

犬たちの目がキョロキョロする表情、天才(たぶん)学生ハッカーの振り向くときのなんともいえない表情など、全編にわたって登場キャラクターが愛らしくてしかたないです。

見ているときに「なんで日本を舞台につくったんだろうな?」と考えてたんですが、おそらくこの「愛らしさ」をひきだせるのが日本人の喋り方だったり、文化だったり、顔の造形だったりしたのかなと思います。

おそらく日本が大好きだから日本を舞台にしたわけではないです。描写がステレオタイプだ、とも意見があるようですが、おそらくわざと狙っています。じゃないとストップモーションアニメで日本を舞台に外国人が映画を作らないと思います。日本らしさをそういう部分で描こうとはしてないです。日本に来て日本で撮影した外国映画が日本をステレオタイプじゃなく描けるかっていうとまったく関係ないかと。

多分監督が意図したのは、日本というよりかは、「メガ崎市」という日本に近い人種がいる架空の東洋ファンタジーです。なので僕は微妙に片言の日本語も全く気になりませんでした。「日本人ではない」から。ウルヴァリンのほうがよっぽど受け付けませんでしたよ(面白かったですけどね、ある意味で)。

むしろ描いているのは、日本だけではない国際問題、のように見受けられます。あんまり詳しくないので偉そうに言えないですが、そう言った意味でも、オモシロ変態日本を映画にしたわけではなく、ちゃんとどんな人が見ても自分の生活している環境、国と照らし合わせることができる舞台として「メガ崎市」をつくっているなと思います。(普通に書いてきましたが「メガ崎市」なんて発想、どうやってでてくるんですかね。。)

ここはどうかなぁ?

ずっと褒めてきましたが、当然この変な映画には気になるところもいくつかあります。まず、

話が面白いかと言われればそうでもない

「ダメじゃん!」って思われるかもしれませんが、この映画にかぎってはこれは些細な問題です。ほかに魅力があるから大丈夫なんですが、それにしても話は別にたいして面白くはないかと。。
スポッツは生きていた!実は兄弟だった!共食い犬の悲しい真実、メガ崎市の黒い陰謀、学生グループの大活躍、小林市長の奇跡の快心、、、。キーワードを並べればとっても面白そうなんですが、びっくりするほど本編には何の起伏もありません。スポッツが生きていても「まぁそうでしょうね。。」と思いますし、兄弟だったとわかるシーンも「へぇ。」程度なんです。小林市長の改心に至っては、そんなことならなんでここまでひどいことしてきたの?って言いたくなるくらい超スピードで解決してしまいます。声優がカタコト気味なんで、余計に「とんでもない茶番」感があります。
たぶんなんでここまでストーリーに起伏を感じないかというと、前項で褒めた、「ここでドラマティックにせず異様にリアルに描写する」効果の副作用のような気がします。たぶん小林市長の改心がピクサーばりに感動的に描写されてしまうと、多分せっかくの効果が薄くなるんだと思います。どっちかというと僕はお話よりその効果のほうが好きなので、副作用は黙認できたのですが、もしかしたら普通に感動したい人は「へ?」ってなるところではあるかもしれないですね。

とはいえ、ストーリーの起伏よりも「人形の愛らしい感情表現」に振り切っていると思うので、感動しないわけではないんです。共食い犬の悲しい真実の、犬の表情には泣けました。ただ、話としては「ふーん、まぁ・・」くらいなんですよね。

ところどころ何言ってるのかわからない

アタリ君が一生懸命勇敢に冒険する様は非常に感動的です。心の底から「こんないい子には幸せになってもらいたい。。」と見てる間応援しました。でも「え?なんていった?」ってところどころなります。原因は明確で、鑑賞してる僕が日本人で、声優の外国人がカタコトで日本語喋ってるからです。
アタリ君だけではありません。フランケンシュタインみたいなあの黒幕はカタコト以前に声がガラガラすぎてほんとうに聞き取れませんでした。
この映画に限っては、カタコトはとてもいいアクセントだと思うんです。日本人俳優もわりと参加していて、ちょい役ででてくるんですが、なぜかカタコトに聞こえます。多分それはわざとだと思うんですよね。前述した、「日本が舞台というわけではない」からだと思うんで。だからむしろ好きな要素なんですけど、聞き取れないのはダメなんじゃないですかね?これは日本人特有で、観客は世界が対象だから字幕で済むんでしょうけど、ここははっきり欠点かなあ。せっかくの日本語のセリフも「同時通訳音声」でほぼ潰されます。

気になる点はそんなところです。あんまり多くはないですが、挙げた点は場合によっては致命的な部分ですよね。でもそれがこの映画の愛らしい部分にもなっているんです。やっぱり思った通りマニアックで変な映画なんですよね。(好きという意味です)

ウェスアンダーソンの「クセ」

この映画は、細かく好きなところをいっていくとキリがないです。試験管で一杯飲んで一本締めするところとか(ここだけ異様に自然な日本人なのはいったいなんでなんでしょうか?笑)
太った少年がドンドコ太鼓を叩くシーン(音楽もウェスアンダーソンはいい感じでツボつきますよね)とか。

こういう細かいところに目がいく方にはおもしろがれるこの作品ですが、多分人によっては全然ハマらないのは明らかですよね。

話が大して面白くない件については、ウェスアンダーソンの他の監督作品にも割と共通しています。ですが、「人物がとっても魅力的」なんです。「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」なんかも割とそんな映画だと思います。この映画もとってもとっても好きなんで、今度記事にします。

ウェスアンダーソン映画の、スカしてて、あざとくて、洒落てて、気取ってて、文句をいうと「センスない」っていってきそうなルックはやっぱり人を選ぶし、あきらかに欠落してるところはあるから。
でも好きになる人には愛される。そんな映画が「犬ヶ島」でした。僕は一気にファンになりました。

この映画見た方はどんな感想だったでしょうか?気になった方は、ディズニー+で見ると、「ゲットバック」も観れるのでおすすめですよ。

それでは。

U-NEXTでも視聴できるみたいです!

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