【駆け出しデザイナー記事】WEBデザイナーの適性とは?【デザインとアートの違い】

WEBデザインを勉強しようかなと思い始めた頃、よく「WEBデザイナー 適性」と検索して、いろんなデザイナーさんのブログ記事を読んでいました。「デザインはセンスではないから大丈夫」「1pxまで拘れる人がいい」「細かい作業に加えて、全体を把握できる人がいい」「常に新しい技術を学べるほうがいい」「コミュニケーション能力があったほうがいい」など、紆余曲折して一応WEBデザイナーになった今でも、確かにそうだなと思うポイントが共通して書いてあったんですが、僕が引っかかった項目に、「WEBデザインとアートを勘違いしてる方は向いていない」というのがありました。なぜかここだけブロガーさんの「なにやら思いがこもったもの」を文章から感じて、それが勉強し始めてからもずっと引っかかっていました。
今回の記事は、「WEBデザインとアートは何が違うのか」「なってからまだ駆け出しの自分が今思うWEBデザイナーの適性」について書こうと思います。一個人の考え方として、勉強を始められた方、デザイナーになってまだ駆け出したばかり、と言った方に、お暇つぶしに読んでいただけたら嬉しいです。

「WEBデザインをアートと勘違いしてらっしゃる。」

なぜこんな記事を書くまでそれが気になったかというと、元美大生だからです。高校から美術予備校に通い出して、一浪して美大に入りました。油絵専攻です。恥ずかしい話ですが、「俺はアーティストとして生きていくしかない」って、本気で考えてた時がありました(ほんっと恥ずかしい)。結局卒業してからは絵は描かなくなり、紆余曲折して就職したり辞めたり、就職したり、辞めたりして、今は一応肩書きはWEBデザイナーとして就職しましたが、その頃は足りない才能なりに「アートとは」みたいなことを毎日毎日考えてました。

デザイン学科の子いわく

在学中はもっぱら同じ油絵科よりデザイン学科の子といる事が多かったです。それは、ちがう分野の方が世界が広がるから。その子もよく言ってたのも、「デザインはアートじゃないんだから」でした。
彼がいうには、「自分の趣味全開だったり、イラストと区別ついてなかったりする人が周りに多い、そうじゃないんだ」ということでした。「むしろデザイナーは、趣味だったり、イラストだったりを『扱う』側の人間なんだ」「デザインの『型』は決まっている。むしろアートの方が『型』が複雑なぶん難しいはずなんだ」と言っていたことを思い出します。

おそらく彼が言っているのは「絵画」と「額縁」の違いです。デザイナーは、完成された絵画に対して、額を飾るならどんな色や形のものがいいか?、展示するスペースのどこの位置に配置するのがいいか?ということを考えるのがデザイナーの仕事だ、といっているのです。

これを言っていた子は今もデザイナーとして活躍しています。

自分はどうなの?

僕なりにも、デザインとアートには違いがあるとは思っていて、僕は「目的と文脈が違う」と感じていました。僕は決して、アートは好き勝手やってる自由人のものではないと思っています。そこらへんは自分が学生当時、今でも賛否両論だった芸術家の村上隆さんの発言と著作に詳しいと思いますが、少なくとも現代アートはルールだらけ、組織政治だらけで、一般社会とあまり変わりがなく、お金というものがとても重要です。それはけっこうデザインと共通していることで、違いはそこからです。
よく言われる話ですが今普通にWEBサイトで見るハンバーガーメニューは、繰り返し繰り返しいろんなサイトがデザインとして採用することで、説明不要で押すとメニューが開くと、ユーザーが認知するまでになっています。これはユーザーが文脈を読み取っているからだと思います。実はこの方法を現代アートも使っています。過去の名作を引用して、その文脈を読み取れる人が「なるほど」と思える作品を日々アーティストが作っています。文脈が全く違います。
そして決定的に違うのが目的で、主に、デザインは「使用」される事が目的で、アートは「鑑賞」される事が目的だと思います。

鑑賞される信号機、使用される油絵

話が飛躍するかもしれないですが、「信号機」をデザインした方は、「これが信号機か、、ふむふむ」と鑑賞して欲しくてデザインしたわけではないと思います。赤の時は止まってほしいし、青の時は進んでほしいはずです。
油絵を根気よく描いた画家は、壁に飾った作品に、決して「覚えておきたいメモを書いた付箋」をはり付けて欲しくないはずです。
とても簡単に言ってしまえばですが、アートとデザインを混同することはこのぐらいの勘違いをしているということになります。

これをWEBデザインでやってしまう、ということは?

話は戻りますが、僕が引っかかった「WEBデザインとアートは違う」と書いた人は、恐らくですが上記の勘違い級のデザインを、新人だか外部だかはわからないですが、見せられたりなんだりされたのだと思います。そしておそらくコーディングをバリバリにやるデザイナーさんなんだと思います。
美大生だったことと、アートとは?みたいなことを考えた事がある僕としたら、「なにもそんな言い方しなくたって、、」と読んで思ったのは事実です。ですが、WEB制作に関わるようになった今は、この文章を書いた方の気持ちがわかるような気がします。僕は本当にデザイナーになりたての時に、提出したデザインを、先輩のコーダーさんから、「コーディングできません」と言われた事があるからです。

「それ、コーディングどうやってすんの?。」

コーディングできない、と言われた理由は、今ならわかります。余白バラバラ、画像大きさバラバラ、どれを画像として書き出すの?どれをテキストでコーディングするの?要素と要素が複雑に重なりすぎ、文字の大きさもバラバラ、コンテンツ幅が大きすぎバラバラ、レスポンシブ の途中は一体どう要素が動くの?その要素の動きはサイトの納期には相応しくないなどなど。
それと、このボタンでどこに移動するの?この注釈はどこの注釈なの?ということも突っ込まれました。
自分はアートとデザインの違いをある程度は理解しているつもりでした。その思い込みはこれで完全に消えました。言葉でわかっていると思っていることは、実際にはアウトプットできるということではないということです。

特にWEBデザインは「使用」できなくてはいけない

実際、その提出したデザインは少なくとも鑑賞を目的とした絵画ようなものではなく、どっちかといえばグラフィックデザインの作り方になっていることが半分問題だと思います。グラフィクデザインとWEBデザインの違いも、これまた「違う」ということを色んな方が話題にする問題なのですが、WEBデザインは特に「使う」要素が大きくて、よくいう「UIデザイン」というのはそれを追求する分野です。そしてグラフィックデザインはあらかじめ「大きさ」が最初から決められ、それは最後まで変わらないのですが、WEBデザインは色んなデバイスから使用されるものなので、それに臨機応変に対応しなけれないけないのも大きな違いです。

「鑑賞される信号機」、「信号機」に戻る

僕が指摘されたなかで一番肝に命じなきゃいけない指摘は「このボタンはどこにいくボタンなの?」です。ぼくは無意識に「鑑賞される信号機」をつくってしまっていたのです。色や、形が、ただそのままで、何を表しているのかを視覚言語として伝えられていなかったのでした。
おそらく、「WEBデザインはアートじゃないんだよ」と書いた方々は、こういったデザインをコーディングしなければならない場面に遭遇してしまったのでしょう。

デザインって、じゃあ一体なんなんだろう

これは駆け出しの僕が偉そうに言えることではない、といいながら書きますが、言ってしまえば、デザインとは見た目だけのことではないということはいえるはずです。視覚伝達と言われたり、問題解決の方法と言われたりするように、視覚要素を使うことはデザイナーにとって使うスキルの一つでしかありません。UXデザイナーはレイアウトというよりかは、ユーザーのペルソナ設定、そのペルソナがプロダクトを使用するストーリーを考える事が主なはずで、手を動かして描くというよりかは、レイアウトに至るまでの理論を描く立ち位置といえると思います。

デザイナーとしてのコミュニケーション能力

コミュニケーションができた方がいいことは、どんな職業でも言えることです。これについては僕も異論ありませんが、コミュニケーションが問題なく行われている職場というものを僕は見たことありません。なので、これはどんな職場でもずっと課題として向き合う問題なので、「デザイナーの適性」とは僕はあんまり思わなくて、「なにに使うか」「どうしてほしいのか」が明確に「視覚言語として伝わるか」を考えられるという意味でコミュニケーションの問題を捉えられる人が向いているはずです。
WEBサイトは使われてなんぼ、さらに使った後にユーザーのどんな行動につながるかで利益が出るか出ないかが重要とされているからです。

アートじゃない=あなたの作品を鑑賞してもらうわけではない

デザイナーの作品は、作家性はあまり求められず、クライアントの解決したい問題をわかりやすく、伝えたい方にもっと伝わるように工夫をするのが主な仕事だなと思います。
僕は接客販売をやっていたことがありまして、よく売れる人は決して「自分を売り込んでいる」わけではなく、「商品をめちゃくちゃ魅力的に伝える」人でした。「自分がいいと思う物を勧める」人ではなく、「この人にはこれがいい」と、人それぞれにあった商品を勧める人でした。
こういったマインドがデザインにも大切だと思っています。
このマインドがある人は、ただただ見た目がよく何をしていいかわからない、コーダーさんが「どうやってコーディングするんだこれ」というようなデザインはしない、またはしなくなる(しなくなりたい)と思います。

余談:アートが悪いわけじゃない

とはいえ、僕はアートがダメとは思っていなくて、混同する事が危険なだけだと思っています。
ですので、これは自分が美大出身だからいうのですが、油絵科出身でも、アートが好きな方でも、全然問題ないはずです。最初は苦労するかもしれません。実際僕は今でもとても気を付けていますし、意識するようにしています。でも鑑賞する作品を作る思考回路を持てる人は、回路ができている分、ギアをデザインに変えると発想面や解決法が浮かびやすいデザイナーになる可能性があるんじゃないかと思います。自分はそうでもないのですが(精進します)、違いや思考法を分ければ、環境や場合によれば強い武器になりえると思います。あくまでデザイナーとして役立ちたい、と考える人に限っての話ですが。
ちなみに、WEBデザイナーはグラフィックデザインに比べて、美大出身という事がそこまでメリットになるわけではなく、まったく違う職種をされていた、美術大学をでていない方が素晴らしいデザインをしながら活躍されていることは珍しくありません。発想を豊かに、決まり切ったレールより紆余曲折あった方が活躍できるのがWEBデザインの仕事なんじゃないかと思います。

結論:実際に誰かに「使ってもらう」ことを考えれる人は向いてる

サイトを実際に見て、行動を起こすことを頭に描きながら、その人の行動を思い浮かべて色や形を作っていける人は確実に「WEBデザイナー」、レイアウトを作ることも、コーディングをすることにも本質的に適性があると思います。「この動きを取り入れることでこうユーザーに思ってもらいたい」「このボタンデザインのほうがすぐに何に使うかわかる」「このクライアントのターゲットユーザーは、この色はあまり惹かれないだろうからこの色かな」など、形づくりながら想定しているユーザーとコミュニケーションしているかたは、とてもいいデザイナーさんだと思います。

向き不向きというのは、勉強している時というより、実際に仕事しないとわからないことですよね。向いている向いていないに囚われすぎずに、やってみるしかそれをわかる方法は他にないです。やっぱり人によって千差万別の適性があると思いますから。

誰にでも挑戦するチャンスがあるわけではないのが厳しい現実なのですが、機会があれば興味のある方は挑戦する価値はあるんじゃないかなーと、思います。

それでは。

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